AI・人工知能がもたらす日本経済・就職率への影響
昨今、メディアで頻繁に取り上げられているテーマの一つが、人工知能(AI)です。
いくつかの企業が人工知能を使った製品やサービスの提供を始めたというニュースも流れています。今や経済界・ビジネス界において最もホットな話題と言っても決して言い過ぎではありません。
さてそんな人工知能ですが、日本経済に対しては一体どのような影響をもたらすことになるのでしょうか?
人工知能と日本経済
人工知能が日本経済あるいは日本社会に与える影響については、現時点ではまだ不確定の部分が多分に残されています。
ですので、現時点でこうしたテーマについて考えようとすると、どうしても予測や推計といった性格のものになってしまいます。
こうした前提の上で、ここでは総務省情報通信政策研究所での検討の結果を紹介したいと思います。
この検討結果では、まず人工知能による経済効果が2045年の時点で121兆円生まれていると推計しています。
またこの検討結果の中では、各産業毎の見通しも示されています。
以下がそれぞれの分野での見通しです。
- 防災分野 今後SNS分析や監視カメラに人工知能が用いられてテロ発生予測システムが実用化し、27年後には災害救助ロボットが実用化する。
- 製造業 20年後にマスカスタマイゼーションや無人メンテナンスが実現する。30年後には無人化工場が大企業で一般化し、在庫ゼロと設計リードタイムゼロが実現する。
- オフィス分野 20年後にマーケティングやビッグデータ分析が自動化する。25年後にはコールセンターでの自動応答がほぼ完全に実現する。
- 生活支援分野 20年後ごろに人工知能による言語理解が実現する。30年後にはある程度の常識的知識を備えた汎用的な執事ロボが普及する。
どの分野を見ても、人工知能を活用することで技術的または経済的に大きな発展が見込めそうです。
さてそれでは、総務省情報通信政策研究所での検討結果を見たところで、次にアクセンチュア株式会社による最新の人工知能についての調査を紹介したいと思います。
同社の調査では、今後人工知能が様々な現場で実用化されることにより、人々の働きが根本的に変わり、労働者個人が経済全体の成長に今まで以上に強力に貢献できるようになり、2035年には労働生産性が最大で40%アップすると予測しています。
そしてこれらの変化によって、同年の年間経済成長率は今よりも倍増しているとも予測しています。
同社によると、これらの発展は人間が時間をより効率的に使うことができるようになって、新たなものを創造するという人間が本来最も得意としている仕事に集中できるようになるために起こるそうです。
人工知能の負の側面
さてそんな人工知能ですが、この技術には負の側面があるということも指摘されています。
具体的には、以下の点が指摘されています。
- 詐欺や窃盗など、あらゆる犯罪がサイバー化する可能性がある
- AIがユーザーの将来や個人の信念を推測し、プライバシーの侵害が起こる可能性がある
- AIが見えない形で人間の意思決定を操作し、個人の自由が侵害される可能性がある
- AIが国の統治に活用され、意思決定のプロセスが不透明になって責任の所在が曖昧になる
- AIが複数集まって連動して意思決定を行い、そのプロセスが不透明になって制御ができなくなる
人工知能が就職率に与える影響
もしも、これからの数十年でここまでに紹介したような人工知能の進化・発展が本当に起った場合には、必然的に学生の就職にも大きな変化が生まれてくることになります。
まず初めに考えられるのは、これまでに存在していた職業が人工知能の発展によって縮小ないし消滅するということです。
過去にも、大きな技術革新が起こった際にはそれまで人間が行っていた仕事が機械に置き換えられるということがありましたが、人工知能でも同じことが起こる可能性があるのです。
そしてそうなると、学生としてはそれだけ就職先が少なくなるということになります。
とは言えそうした技術革新が起これば、新しい職業が生まれることになりますから、全体で見れば必ずしも就職先が少なくなるとは言えません。
ですから、人工知能による影響だけで就職率が大きく変化するという様な事もありません。仮にあったとしても、それは僅かに就職率の数字を上下させる程度のものに止まると思われます。
それよりもむしろ、日本経済全体の成長率の方が就職率に対して大きな影響を及ぼしています。