トランプ政権がもたらす日本経済への影響
米国のドナルド・トランプ大統領は、自らが大統領候補として戦っている最中から、様々な経済政策を打ち出してきました。
そして、実際に大統領に就任してからも選挙公約をほぼ忠実に実行してきています。
そんなトランプ政権ですが、その経済政策が及ぼす影響は決して米国のみには止まりません。
米国が世界一の経済大国であり、同時に世界経済がドル基軸体制を維持している限り、米国の経済政策は必ず全世界に影響することになります。
ここでは、特に日本経済への影響という点に的を絞ってトランプ政権の経済政策に触れていきたいと思います。
為替政策による影響
トランプ政権の為替政策においては、ドル高をけん制するという動きが目立ちます。
これはトランプ自身が大統領候補の時から主張してきたことで、その主張が大統領就任後も引き続き影響力を持っているのです。
最も分かりやすい例は、今年の1月31日に製薬メーカーの経営陣を集めて行った会合での以下の様な発言です。
「中国が何をしているかそして日本が何年も何をしてきたか見てみろ。彼らは、為替を操作して、通貨安に誘導している。」
通常、他国の為替政策について言及する場合には具体的な国名を伏せるのが慣例なのですが、この発言では日本が名指しで批判されました。
またこの他にも、トランプ大統領は特に日本、中国、ドイツの為替政策については、度々公然と批判を行っています。
従って、日本がこれまで以上に為替レートを円安に誘導するようなことがあれば、何らかの圧力が掛かってくることは想像に難くありません。
通商政策による影響
トランプ政権の経済政策は保守主義的と言われていますが、その一番の原因は通商政策にあります。
政権発足後に打ち出された税制改革案の中に盛り込まれた、輸入品に20%程度の「国境税」を掛けるという政策がその典型です。
また、トランプ大統領は「日本や中国は、それぞれの国内においてアメリカ製品の販売を難しくさせていて、公平な貿易を行っていない」といった発言も行っています。
中国はともかく、自由主義経済国である日本にまでこうした批判を行っているわけですから、今後何らかの圧力があることは容易に想像できます。
さらに、今年の1月23日に行われた企業幹部との会合でトランプ大統領は以下の様に発言しています。
「われわれが日本で自動車を販売する場合、日本は販売を難しくさせている。しかし、日本はアメリカでたくさんの自動車を売っている。この問題は協議しなければならない。これは公平ではない。」
しかも、こうした発言は個別の企業にまで及んでおり、これまでにトヨタなどが名指しで批判を受けています。
これらのことを総合して考えると、トランプ政権が今後日本に対する貿易赤字を解消するために、何らかの手を売ってくることは間違いないと言えそうです。
TPPと日米FTA
TPPは日本をはじめ、様々な国が参加して交渉が行われ、協定発効の一歩手前にまで迫っていました。
しかし、トランプ大統領が就任直後に出した大統領令によって状況は一変しました。
大統領令の内容は「アメリカがTPP交渉から永久に離脱することを指示する」というもので、これによって発行寸前だったTPPは一瞬にして宙に浮いてしまったのです。
協定の発行にはアメリカの承認が欠かせませんから、トランプ政権の意思が変わらない限りは、TPPは発行されないということになります。
そして、トランプ大統領は労働組合関係者などとの会談で「TPPは正しい道ではなかった。われわれは交渉参加国と1対1の二国間の経済連携協定を目指す。」とも発言しています。
1対1の二国間の経済連携協定というのは、日本との間で言えば日米FTAを指すことになりますから、今後はFTAの締結が大きな課題になると考えられます。